旧支配者 — CTHYLLA

クティラ

ダーレス以降

クトゥルフの「秘密の種」。原典に外見描写はなく、後年のファン創作を経て翼ある頭足類として定着した、再生と秘匿を司る旧支配者。

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クティラ

「黒い輪状の模様を持つ赤黒い体、伸縮する3対の眼柄、鉤爪状の触手」

— ティナ・L・ジェンズ「In His Daughter's Darkling Womb」(1997年、後年の定着イメージ)

概要

クティラは、H・P・ラヴクラフト自身の作品には登場せず、後継作家ブライアン・ラムレイが1975年の長編『The Transition of Titus Crow』で創造した神格である。原文でクトゥルフの「秘密の種(Secret Seed)」と呼ばれ、自らが滅ぼされた際にはクティラの「仄暗い胎内」から再誕することを目論んでいるとされる、クトゥルフの存続そのものを担保する存在として設定された[1]

基本プロフィール

項目内容
分類旧支配者
欧文表記CTHYLLA
初出ブライアン・ラムレイ『The Transition of Titus Crow』(1975年)
象徴するテーマ秘匿、再生、血統、母性
主な信奉者・守護者深きものどもクトゥルフの落し子、ダゴン、ヒュドラ(異説あり)

別名/呼称

  • The Hidden One(隠されし者)
  • The Secret One(秘密の者)
  • The Kraken(クラーケン)

いずれもラムレイの原文に由来する呼称で、後年のCall of Cthulhu TRPGのシナリオ制作ガイドでも、彼女は直接名指しされることが少なく、主に「隠されし者」の異名で言及される、という設定が示されている。

区分

原典(ラムレイ作品)上はクトゥルフの「秘密の種」という個別の存在として登場するのみで、系譜上の位置づけは持たなかった。この系譜を整えたのは、ラムレイに先立つリン・カーターの1975年作『Out of the Ages』である。カーターはガタノトーアをクトゥルフの息子とし、イソグサ・ゾス=オンマグという2人の弟を設定した。ラムレイはこのカーターの兄弟設定の上に、末子としてクティラを接ぎ木したとされる。後世に整理された系譜では、母はイダ=ヤー、一族はゾス星系からクトゥルフとともに地球へ移住したとされるが、これらはいずれもラヴクラフト本人の設定ではなく、後継作家による体系化である点に注意が必要である。

象徴・モチーフ

隠蔽・秘匿そのものが力として機能する点が最大の特徴である。父クトゥルフが「眠りながら支配する」のに対し、クティラは「知られないこと」によって自らの役割(クトゥルフの再生装置)を果たす。この対比から、彼女は再生・母性・血統の存続といったテーマの象徴として扱われることが多い。

性質・権能

  • クトゥルフが破壊された場合、自らの胎内から彼を新たに誕生させる「再生の母胎」としての役割を担う(ラムレイ原文の中心設定)[1]
  • ラムレイの原文には身体描写が一切なく、現在「標準」とされる「翼を持つ巨大な頭足類」のイメージは、原典ではなく1997年のティナ・L・ジェンズの短編「In His Daughter’s Darkling Womb」で後付けされたものである
  • ジェンズ以降に定着した外見: 黒い輪状の模様を持つ赤黒い体、伸縮する3対の眼柄、鉤爪状の触手(通常8本、最大12本まで伸長可能)、伸縮するひれ状の翼。体の比率も自在に変えられるとされる
  • Call of Cthulhu TRPGのシナリオ制作ガイドでは、彼女はクトゥルフとともに地球へやって来た旧支配者であり、太古の力によってではなく、クトゥルフ自身の意志によってルルイエに封印された(自らの復活計画を守るため)、という独自の設定が示されている

関係図

守護者・所在地についてはラムレイ系譜の作品間でも一致しておらず、少なくとも2つの異なる説が並立している。ひとつは、ルルイエに安置され、クトゥルフの落し子ダゴン・ヒュドラによって守護されているとする説。もうひとつは、ティナ・L・ジェンズの系譜に従い、当初はイハ=ンスレイでユグ族・ユグヤ族・深きものどもに守護されていたが、同地への襲撃の後にグレートバリアリーフへ移されたとする説である。両者は矛盾したまま並立する異説として扱われる。

Call of Cthulhu TRPGの守護体制としては、彼女の秘密を守り、その存在を探る調査者を沈黙させ、脅し、あるいは消し去る専従の教団「クティラの守り手たち」が設定されている。

クロスオーバー作品としては、ピーター・ロウリックの短編「In the Hall of the Yellow King」がある。クトゥルフ(セピアの公)とハスター(黄衣の王)の戦争において、敗れたセピアの公が和平の証としてクティラをハスターに嫁がせるという筋書きで、ハスターが人型の器を得ていたため、クティラは人間の女性の姿をとって彼を誘惑し、最終的に両者ともに黒檀の棺へ封じ込めたとされる。ハスター神話とクトゥルフ神話を接続する後年のファン/セミプロ創作の一例である。

主要登場作と読みどころ

  • ブライアン・ラムレイ『The Transition of Titus Crow』(1975年): クティラの初出。外見描写のない「秘密の種」としての原点[1]
  • リン・カーター『Out of the Ages』(1975年): ガタノトーア・イソグサ・ゾス=オンマグの兄弟設定を確立し、後のクティラ系譜の土台を作った作品
  • ティナ・L・ジェンズ「In His Daughter’s Darkling Womb」(1997年): 現在「標準」とされるクティラの外見・生態(捕獲・人工授精・産卵などを含む詳細な筋書き)を作り上げた短編
  • ピーター・ロウリック「In the Hall of the Yellow King」: クトゥルフ神話とハスター神話をクティラの婚姻という形で接続する後年の作品

よくある誤解

Q. クティラの「翼のある巨大な頭足類」という姿はラヴクラフトかラムレイが描いたものですか?

A. いいえ。創造者であるラムレイの原文にも、身体的特徴の描写は一切ありません。現在広く知られる姿は、1997年のティナ・L・ジェンズの短編で新たに描かれたものが定着したものです。

Q. クティラはどこに封印されていますか?

A. 出典によって答えが分かれます。ルルイエ説とイハ=ンスレイ(のちグレートバリアリーフへ移動)説が併存しており、どちらか一方が「正史」と確定しているわけではありません。

Q. 近年の「萌えクトゥルフ」的なクティラ像は公式設定ですか?

A. いいえ。日本のインディー格闘ゲーム『Chaos Code』が「魔法少女」を自称するクティラを描いたことがファンの間で大きな影響力を持ち、モチーフ商品や創作キャラクターまで派生したとされますが、これはあくまで二次創作的な人気の広がりであり、原典設定ではありません。これらの記述は一部ファンの整理に基づくもので、裏付けの弱い伝聞情報として扱う必要があります。

出典

  • [1] “his Secret Seed, Cthylla, in whose darkling womb he planned to rise up again one day reborn, had been threatened.”(訳: 「彼の秘密の種であるクティラ——その仄暗い胎内において、彼はいつか再び立ち上がり生まれ変わることを目論んでいた——が脅かされていた」) — Brian Lumley, “The Transition of Titus Crow”(1975年、クティラの唯一の原典), 引用元: Deep Cuts in a Lovecraftian Vein(1975年版原文からの引用を掲載)。本作は1975年刊行の著作権存続作品であり全文入手はできないため、この一節のみを引用する。
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