編集部注(拡張神話): 本記事が扱う「旧神」という枠組みは、H・P・ラヴクラフト存命期のパブリックドメイン原典には登場しません。オーガスト・ダーレスが後年構築した体系であり、この体系化を裏付ける個々の作品の多くは現時点でパブリックドメインではないため、本記事は原文からの引用を行わず、公知の設定情報の要約のみで構成しています。
概要
オーガスト・ダーレスがクトゥルフ神話を体系化する過程で導入した「善なる神々」の総称。人類に味方し、悪しき「旧支配者(Great Old Ones)」と戦い、これを各地に封印したとされる。ラヴクラフト自身の作品にはこうした善悪二元論的な対立構図は存在しない。
基本プロフィール
- 分類: 概念(神々の分類枠組み)
- 欧文表記: ELDER GODS
- 初出・出典: オーガスト・ダーレスによる体系化(1930年代以降の一連の作品・エッセイ)
由来と歴史 / 詳細設定
ダーレスは、ラヴクラフトの死後、彼が遺した多様な神格・存在群を「旧支配者」対「旧神」という善悪の対立構造として整理し直した。旧神は人類の味方として旧支配者を封印した存在とされ、キリスト教的な善悪二元論・堕天使伝説に近い枠組みを持ち込んだ体系だとする指摘が研究者から繰り返しなされている。
ラヴクラフト研究者S・T・ジョシは、この体系化がラヴクラフト本来の作品世界(無神論的・非道徳的な宇宙観で、”神々”とされる存在の多くは単に人知を超えた異星の存在にすぎず、善悪の彼岸にある)から大きく逸脱していると批判的に論じている。一方、研究者ロバート・M・プライスは、『狂気の山脈にて』などラヴクラフト自身の作品に見られる異星種族同士の対立の描写が、ダーレスの体系化の土台になっている側面もあると指摘しており、両者の間で評価が分かれている。
なお「旧神」の代表格として扱われることの多いノーデンス(ラヴクラフト作品「霧の中の奇妙な高屋敷」「未知なるカダスを夢に求めて」に登場する、比較的好意的に描かれる深淵の主)についても、彼を「旧神」の一員とする解釈自体はダーレスのエッセイ「クトゥルフ神話についての覚書」に由来するものであり、ラヴクラフト自身がその位置づけを明言したわけではない。
性質と影響
この枠組みの導入により、クトゥルフ神話はより物語として理解しやすい「勧善懲悪」的な構造を獲得した一方、ラヴクラフト本来の「宇宙は人間の道徳や理解を超えたところにあり、救済者も裁定者も存在しない」という宇宙的恐怖の哲学とは相容れない、という批判が繰り返し指摘されている。とはいえ、この対立構図はテーブルトークRPGをはじめとする後世の作品群で広く採用され、現代の一般的な「クトゥルフ神話」イメージの形成に大きな影響を与えた。
関連する用語
旧支配者、外なる神、宇宙的恐怖、ダーレス体系化






