書籍(フランス語・大型豪華版、2026年10月21日発売予定) — Supercollector Lovecraft

Supercollector Lovecraft(2026年版)

フランスの出版社Bragelonneが2026年10月21日に刊行する大型コレクター版『Supercollector Lovecraft』。752ページ・85ユーロで「クトゥルフ神話の33の核心的物語」と「夢をテーマにした16編」を一冊にまとめる。同社が2023年に刊行した同名・同仕様の旧版と公式ページを突き合わせ、新刊なのか実質的な再版なのかを確認したうえで、収録作の内訳を当サイトの「神話の三層」で読み解く。

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創元推理文庫『ラヴクラフト全集2』。本書が一冊にまとめている仏訳作品群のうち「クトゥルフの呼び声」「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を日本語で読める。

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概要

フランスの出版社Bragelonneは、大型コレクター版『Supercollector Lovecraft』を2026年10月21日に刊行すると、同社公式カタログページで発表している。著者はH.P. Lovecraft、752ページ、価格85ユーロ、ISBNは979-10-281-3139-5である[1]。

公式ページの説明によれば、本書は「クトゥルフ神話の33の核心的物語(les trente-trois récits essentiels du mythe)」と「夢をテーマにした16編(seize nouvelles sur la thématique du rêve)」を一冊に収める。内訳として『Cthulhu : Le Mythe』第I巻・第II巻・第III巻、そして『Les Contrées du rêve(夢の国)』という既存の4冊を統合した構成だと明記されている[1]。

装丁は丸背の糸綴じ製本、表紙は青い布地へのHUV(高圧紫外線硬化)四色刷り、表紙全面に銅色のホットスタンピングを施す。本文用紙はHolmen Bookクリーム、見返しは黒のパントーン単色刷り、栞と花布(トランシュフィル)が付く。16ページのカラー口絵を収録し、Fred Augis、Johann Bodin、Mikaël Bourgouin、Benjamin Carré、Xavier Collette、Émile Denis、Aurore Folny、Didier Graffet、Maéna Paillet、Pascal Quidault、Jean-Sébastien Rossbach、Marc Simonetti、Sabrina Tobalの13名がこの口絵を手がけたと、公式ページに名前が列挙されている[1]。日本国内での正規販売・邦訳の予定は、本稿で参照した資料の範囲では確認できていない。

新刊か、実質的な再版か——2023年版との突き合わせ

このタイトルには先行版がある。Bragelonneは2023年10月18日、同じ書名・同じ752ページ・同じ85ユーロで『Supercollector Lovecraft』をすでに刊行していた。ISBNは979-10-281-1522-7で、こちらも公式ページが今なお残っている[2]。

2023年版のページを開くと、「Formats et éditions(判型と版)」という欄に「Autre(その他)」というリンクが2つ並んでいて、一方が2023年版自身(ISBN …1522-7)、もう一方が2026年版(ISBN …3139-5)を指している。2026年版のページ側にも同じ形で、2023年版へのリンクが「Autre」として置かれている。つまりBragelonne自身が、両者を「同じ商品の別フォーマット」として並べて扱っている[1][2]。

内容を示す説明文もほぼ同一だ。「33の核心的物語」「16編の夢の物語」「Cthulhu : Le Mythe 全3巻+Les Contrées du rêve」という統合の枠組み、丸背糸綴じ・青い布表紙へのHUV四色刷り・銅色ホットスタンピング・Holmen Bookクリーム用紙・黒パントーンの見返し・栞という仕様の記述は、句読点の位置まで含めてほぼ一字一句一致する[1][2]。

両者の間で確認できた唯一の文面上の違いは、16ページの口絵を担当した13名のイラストレーター名を、2026年版が本文説明に明記している点である。2023年版の説明文は「seize magnifiques illustrations en couleur(16点の見事なカラー挿絵)」とだけ記し、担当者名を挙げていない[2]。ページ内の他の箇所を検索しても、2023年版のページにはこの13名の名前は一つも現れない。挿絵そのものの中身が両版で異なるのか、単に2026年版のページで初めて担当者名を明記するようになっただけなのかは、公式ページの文面だけでは判別できない。表紙デザインの実物同士を画像で見比べる検証は本稿では行っていない。

以上を踏まえると、2026年版は書き下ろしの新刊ではなく、Bragelonneが2023年に刊行した同一構成・同一仕様のコレクター版を、新しいISBNのもとで刊行し直したものだと判断できる。ただし公式ページ自体は「réédition(再版)」という語を一度も使っておらず、旧版が品切れによる刷新なのか、在庫更新にともなう型番変更なのかは、参照した資料からは確認できていない。

「33の物語」の内訳——4冊の元版を実際にたどる

公式ページは「33の核心的物語」とだけ述べ、個別の作品名までは挙げていない。そこで統合元とされる4冊、『Cthulhu : Le Mythe』第I巻・第II巻・第III巻、『Les Contrées du rêve』それぞれの公式カタログページを個別に確認した。

第I巻(2015年10月21日刊、432ページ、翻訳Maxime Le Dain・Sonia Quémener)は、Jérôme Bouscautによる序文に続けて、「名もなき都市」「祭り」「クトゥルフの呼び声」「ダニッチの怪」「闇に囁くもの」「インスマスの悪夢」「魔女の家の夢」「戸口にあらわれたもの」「闇をさまようもの」の9編を収める[3]。第II巻にあたる『Les Montagnes de la démence et autres récits』(2015年10月21日刊、432ページ、翻訳Arnaud Demaegd)は、「アザトース」「ネクロノミコンの歴史」「ニャルラトホテプ」「ダゴン」「彼方より」「魔犬」「エーリッヒ・ツァンの音楽」「眠りの壁の彼方」「神殿」「潜み棲む恐怖」「宇宙からの色」「時間からの影」「狂気の山脈にて」の13編[4]。第III巻(2016年9月14日刊、384ページ、翻訳Arnaud Demaegd)は、「レッド・フックの恐怖」「ハーバート・ウェスト―死体蘇生者」「忌み家」「洞窟の獣」「書物」「ピックマンのモデル」「壁の中の鼠」「われ、異界より」「墓」「名状しがたきもの」、そして「チャールズ・デクスター・ウォードの奇怪な事件」の11編を収める[5]。9+13+11=33編となり、公式ページが謳う数と一致する。

『Les Contrées du rêve』(2018年8月16日刊、312ページ、翻訳Arnaud Demaegd)の16編は「ポラリス」「白い帆船」「サルナスをおそいし呪い」「樹」「ウルタールの猫」「他の神々」「セレファイス」「イラノンの探求」「ヒュプノス」「記憶」「ランドルフ・カーターの陳述」「銀の鍵」「銀の鍵の門を越えて」「未知なるカダスを夢に求めて」「霧の高き異形の館」「忘却の彼方に」で、これも「16編」という公式ページの記載と一致する[6]。

4冊を合算した元のページ数は432+432+384+312=1560ページで、752ページの本書はその半分未満に圧縮されている計算になる。この差が判型の変更(元版はいずれも「Grand Format」大判)によるものか、組版の詰め直しによるものかは、公式ページの記載だけでは確認できない。

もう一点確認できたのは、翻訳者が一枚岩ではないという事実だ。第I巻はMaxime Le DainとSonia Quémenerの共訳、第II巻・第III巻・『Les Contrées du rêve』はArnaud Demaegdの単独訳である[3][4][5][6]。Supercollector自体のページは翻訳者名を一切記載していないため、この訳者構成は元の4冊のページを個別にたどって初めて分かる情報であり、Supercollectorの商品ページ単体を読んだだけでは把握できない。

三層のどこに立つか——ダーレスもTRPGも介在しない33編

当サイトが収蔵している他のBragelonne関連記事と比べると、本書の位置づけがはっきりする。当サイトが「L’Affaire Charles Dexter Ward」記事で確認した通り、Bragelonneは2026年、David Camusによる統一新訳シリーズ「Intégrale H.P. Lovecraft」も並行して刊行している。同シリーズの第3巻(2026年9月16日発売)は「チャールズ・デクスター・ウォードの奇怪な事件」1作だけをエッセイ・書簡・専門家注釈付きで独立させた文庫版で、今回のSupercollectorが同じ作品を全33編中の1編として収める扱いとは対照的だ。また「L’Appel de Cthulhu illustré」記事で確認した通り、翻訳者Maxime Le Dainは同じ2026年、フランソワ・バランジェの挿絵を添えた「クトゥルフの呼び声」単独の挿絵版(百周年記念版)も手がけている。Le DainはSupercollectorの元版である第I巻の共訳者でもあり、同じ2026年にBragelonne社内で複数のラヴクラフト関連企画へ関わっていることになる。整理すると、同じ2026年にBragelonneが走らせているラヴクラフト関連の刊行企画は、少なくとも(1)Supercollector Lovecraftという既存4冊の再編集版、(2)Intégrale H.P. Lovecraftという新訳による作品ごとの独立刊行、(3)L’Appel de Cthulhu illustréのような単独作品の挿絵版、の3系統が並走している。

内容面では、当サイトが「原典/ダーレス系拡張/TRPG設定——三層で読み解くクトゥルフ神話」記事で整理した三層のうち、本書に集まる33編+16編は例外なく第1層(ラヴクラフト原典、1917-1937)に属する。当サイトが「オーガスト・ダーレスとアーカム・ハウス」記事で確認した通り、ダーレスは自身の解釈や加筆をラヴクラフトの遺稿・断片に加える形で「死後合作」を多数世に出しており、そうした第2層の作品(「インスマスの彫像」等)は本書の目次には一つも見当たらない。TRPG側の用語・設定を持ち込む第3層の要素も、収録作の題名を見る限り確認できない。同じ2026年に刊行されたTitan Books社の英語アンソロジー『Weirder Shadows Over Innsmouth』(当サイト既報)が、ラヴクラフト自身の詩・ダーレスとの死後合作・現代作家17編という三つの著者性を一冊に同居させていたのとは対照的に、Supercollector Lovecraftはラヴクラフト単独の執筆物だけで構成された、いわば「第1層だけを集めた」豪華版という性格がはっきりしている。

これは褒め言葉としての整理ではなく、単に事実としてそうだという確認にとどまる。第1層だけを集めたことがこの版の価値を高めるとも低めるとも、本稿では判断しない。確認できるのは、収録作の題名から見るかぎり後世作家の手が入った作品が一つも紛れ込んでいないという一点である。

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出典

  • [1] Bragelonne公式カタログページ「Supercollector Lovecraft」(2026年版、2026年9月11日確認)。発売日が2026年10月21日であること、752ページ・85ユーロ・ISBN 979-10-281-3139-5であること、「33の核心的物語」「16編の夢の物語」を収めること、統合元が『Cthulhu : Le Mythe』第I〜III巻と『Les Contrées du rêve』であること、装丁仕様(丸背糸綴じ・青い布表紙へのHUV四色刷り・銅色ホットスタンピング・Holmen Bookクリーム用紙・黒パントーンの見返し・栞)、16ページのカラー口絵を13名のイラストレーターが担当していること、「Formats et éditions」欄に2023年版が「Autre」として併記されていることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9791028131395-supercollector-lovecraft/ ↩
  • [2] Bragelonne公式カタログページ「Supercollector Lovecraft」(2023年版、2026年9月11日確認)。発売日が2023年10月18日であること、752ページ・85ユーロ・ISBN 979-10-281-1522-7であること、内容・装丁の説明文が2026年版とほぼ同一であること、イラストレーター名の記載がないこと、「Formats et éditions」欄に2026年版が「Autre」として併記されていることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9791028115227-supercollector-lovecraft/ ↩
  • [3] Bragelonne公式カタログページ「Cthulhu : Le Mythe – Livre I」(2026年9月11日確認)。翻訳者がMaxime Le DainとSonia Quémenerであること、432ページ・2015年10月21日刊であること、Jérôme Bouscautによる序文と9編の短編を収めることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9782352949107-cthulhu-le-mythe-livre-i/ ↩
  • [4] Bragelonne公式カタログページ「Les Montagnes de la démence et autres récits(Cthulhu : Le Mythe 第II巻)」(2026年9月11日確認)。翻訳者がArnaud Demaegdであること、432ページ・2015年10月21日刊であること、13編の短編を収めることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9782352948971-les-montagnes-de-la-demence-et-autres-recits/ ↩
  • [5] Bragelonne公式カタログページ「Cthulhu : Le Mythe – Livre III」(2026年9月11日確認)。翻訳者がArnaud Demaegdであること、384ページ・2016年9月14日刊であること、11編(「L’Affaire Charles Dexter Ward」を含む)を収めることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9782820503213-cthulhu-le-mythe-livre-iii/ ↩
  • [6] Bragelonne公式カタログページ「Les Contrées du rêve」(2026年9月11日確認)。翻訳者がArnaud Demaegdであること、312ページ・2018年8月16日刊であること、16編を収めることを確認。https://www.bragelonne.fr/catalogue/9791028104580-les-contrees-du-reve/ ↩

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